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「知ってる。お前の自己紹介なんていらない」
対する黒曜石の目の彼は、ちらりとエカードさんを見てそう吐き捨てた。エカードさんは口元を緩めつつ、呆れたような表情を浮かべる。
「お前は知ってる。だけど、彼は知らないだろう。お前もさっさと自己紹介をしろ」
「……はぁ。キリアン・レヴィン。二十二歳。……これでいいか?」
エカードさんに促されて、黒曜石の目の彼――キリアンさんが名乗ってくれた。
その後、僕にちらっと視線を向けてくる。
……あ、そうか。先ほどの会話を聞くに、僕だけが初対面になる。キリアンさんの自己紹介を聞くのは、僕だけ。そして、僕も名乗る必要がある。
「は、はい。えぇっと、僕は……」
そこまで言って、口ごもった。
……どうしよう。自己紹介なんて、なにを言ったらいいかがわからない。
(いや、シンプルに名前と年齢くらいでいいの……? それとも、職業?)
僕が魔法使いだって知らないと、このお二人は困るよね……?
なんて思って頭の中がパニックに陥っていると、露骨な溜息が聞こえてきた。
そちらに視線を向ければ、そこには退屈したような表情のキリアンさん。
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