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「いやぁ、ジェリーは自覚がないみたいだな。……浮世離れした儚げな美人さんだ」
「……美人だなんて、そんな」
エカードさんは口が上手い。僕は醜い容貌をしていて、見るに堪えない顔立ちだ。
そんな顔を隠したくて、目元が隠れるまで前髪を伸ばしているくらいなんだから……。
「その前髪、上げたほうがいいと思うよ。そっちのほうが可愛い」
「か、わいい……?」
生まれて初めて言われた単語に、僕は放心する。
……可愛い? 僕が? 羽虫以下の存在の僕が?
「……エカード。コイツ固まってるぞ。さすがに男に可愛いはないだろう。不快になる」
キリアンさんが僕の態度を別の意味で解釈した。違う。全然不快になんてなってない!
「ち、違います、違います! ただ、可愛いなんて言われたことなくて……!」
ぶんぶんと首を横に振って、そう伝える。別に不快になったわけじゃない。
それだけ、伝わっていればいいんだけれど……。
「そう? 美人とか、可愛いとか、言われないか?」
「言われたことありません! 一度たりとも!」
必死に否定をする。だって、僕の所為でエカードさんの美醜感覚がおかしいと思われたら申し訳なくてたまらない。
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