第1章 出逢う

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「――っつ」  僕の真っ白なローブの上に広がる、紅茶。それは茶色のシミを作っていった。 「おい!」 「――え?」  いきなり大きな声で言葉をかけられて、僕は驚く。そして、掴まれた手首。  慌ててそちらに視線を向けると、そこには心配そうな表情を浮かべたキリアンさんがいた。 「火傷、してないか?」  キリアンさんが、僕にそう問いかけてくる。……え、え、これって、どういう? 「……キリアン、落ち着いて。ジェリーの落ち着きようからして、火傷はしていないはずだ」  ソファーから立ち上がったエカードさんが、絨毯の上に転がるティーカップを手に取る。カップに傷はなさそうで、ほっと一安心。 「ジェリー、何処か痛いところとか、あるか?」 「え、えぇっと……」  エカードさんに優しく尋ねられて、僕はゆるゆると首を横に振る。  そうすれば、キリアンさんが僕の手首を離してくれた。それから、彼はバツが悪そうに顔を背ける。 「……悪いな、キリアンはちょっと訳ありでな」  僕のローブに広がる紅茶のシミ。それをどこからか取り出したタオルで拭きつつ、エカードさんが笑ってそう言う。 「ま、あんまり気にするな。……というかこれ、落ちるのか?」 「……多分」  露骨に話題を変えられたけれど、今更蒸し返すこともできない。  僕は本当に小心者で臆病者だ。
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