第1章 出逢う

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 それを再認識して、紅茶のシミを見つめた。……帰ったら、洗わなくちゃ。 「落ちなくても、その。師匠にもらった新しいものがあるから、大丈夫……です」  このローブは五年くらい使っている。ただ、師匠は年に一度新しいものをくれるのだ。  だから、クローゼットの中にはまだ新品のローブがたくさんあった。  デザインは一つ一つちょっと違うけれど、問題ないとは思う。 (これはお気に入りだったけれど、そろそろ新しいものを出すべきだったしね)  ポジティブに考えれば、これはその転機をくれた出来事ということになる……のかな。 「……そうか」  エカードさんがほっと胸を撫でおろしたのがわかった。 「それにしても、このローブはとてもいい素材を使っているな。モンスターから採取した毛皮で作られているみたいだが」  興味深そうに僕のローブを触って、エカードさんがブツブツとなにかを呟いている。 「……すみませんが、それに関しては僕、よく知らないです。これ、師匠が何処かに作成を頼んでいるっていうものなので」 「へぇ、ってことはオーダーメイド?」 「そう、みたいです」  師匠のモットーに『魔法使いならば道具や衣服にこだわるべきだ』というものがある。 『かといって、なにもかもが良ければいいというものではない。自分の実力にぴったりと合うものが一番だ。そういう点で、キミにはこのローブがよく合う』  弟子入りしたばかりの頃。師匠はそう言っていた。……あぁ、懐かしいなって。 「ふぅん。……多分これ、王都にある有名な仕立て屋が仕立てたものだな」 「……そう、なんですか?」 「あぁ、ジェリーの師匠が何者かは知らないけれど、相当いろんな知識があることはわかる」  ……僕から見た師匠は、ただの魔法オタクだ。けど、他の人から見たら師匠は全然違う人物に見えるんだろう。 (まるで、サイコロみたいだ)  それぞれの面に『別の顔』がある。師匠はそういう――得体のしれない存在、なのかもしれない。
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