第1章 出逢う

21/25
前へ
/35ページ
次へ
「魔法薬の一種を作ってみている。……ま、いわば実験で、失敗したようだが」 「……このにおい、強烈ですよ」  鼻をつまんでそう言えば、師匠は笑う。  ……この人の鼻は詰まっているんじゃないか。  そう思えるほどに強烈なにおいに、僕は気分が悪くなってしまいそうだった。今すぐにでも、外に出たい。 「……そうか。やはり、キミにはこのにおいがわかるのか」 「え……」  師匠の呟きが耳に届いて、僕はぽかんとする。  ……このにおい、もしかして特殊なものなんだろうか? 「……いや、なんでもない。これは完成形ではないから、今のところはなんとも言えないな」  しかし、師匠はゆるゆると首を横に振ってそう告げた。……これ以上聞くなという雰囲気がひしひしと伝わってきて、僕は口を閉ざす。 「さぁ、こんなことをしている場合ではない。キミの報告を聞こうじゃないか」 「……あの、片付け」 「そんなもの後でいい。ただ、キミが臭いと言うのならば、別室で話をしよう」  そう言った師匠は、僕の隣を通り抜けてリビングのほうへと向かう。……僕は早足で師匠の後を追った。  師匠がソファーに腰を下ろして、テーブルの上に手のひらをかざす。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加