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「魔法薬の一種を作ってみている。……ま、いわば実験で、失敗したようだが」
「……このにおい、強烈ですよ」
鼻をつまんでそう言えば、師匠は笑う。
……この人の鼻は詰まっているんじゃないか。
そう思えるほどに強烈なにおいに、僕は気分が悪くなってしまいそうだった。今すぐにでも、外に出たい。
「……そうか。やはり、キミにはこのにおいがわかるのか」
「え……」
師匠の呟きが耳に届いて、僕はぽかんとする。
……このにおい、もしかして特殊なものなんだろうか?
「……いや、なんでもない。これは完成形ではないから、今のところはなんとも言えないな」
しかし、師匠はゆるゆると首を横に振ってそう告げた。……これ以上聞くなという雰囲気がひしひしと伝わってきて、僕は口を閉ざす。
「さぁ、こんなことをしている場合ではない。キミの報告を聞こうじゃないか」
「……あの、片付け」
「そんなもの後でいい。ただ、キミが臭いと言うのならば、別室で話をしよう」
そう言った師匠は、僕の隣を通り抜けてリビングのほうへと向かう。……僕は早足で師匠の後を追った。
師匠がソファーに腰を下ろして、テーブルの上に手のひらをかざす。
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