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ぽふんと音を立ててティーセットが姿を現した。アンティークもののカップとポットは、師匠のお気に入り。
「さて、キミも飲むんだろう。そこに座れ」
「……はい」
ポットから紅茶を注ぐ師匠。
鼻に届くのは、いい香り。あぁ、先ほどの鼻が曲がりそうなにおいよりもずっとずーっといい。
いつもの場所に腰を下ろして、僕は自然と眉をひそめた。
「……硬い」
王城のソファーはふかふかで、快適だったのにな……。
心の中でそう思っていれば、師匠がけらけらと声を上げて笑う。
「あそこと一緒になどしてくれるなよ。ここはあくまでも一般的な家だ」
「……僕がソファーを買い直してもいいですか?」
これでもそれなりに貯金はある。というか、師匠がちまちまとくれるお小遣いを貯めていたらこうなった。
一人掛けのソファーくらいならば、買えると思うんだけど……。
「やめておくんだね。……どうせ、キミは使わないさ」
けど、師匠はそう言う。使わないって、僕が使うために買うはずなんだけど……。
「さ、まぁ、そんなソファーの話はいいとして。キミの話が聞きたい。生まれて初めての王城は、どうだったかい?」
師匠が脚を組んで、そのうえで手を組みつつそう問いかけてくる。
その姿を見て、僕は恐る恐る口を開いた。
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