70人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、僕を見据えた。
「私もキミも、家族に問題があった。だから、私はキミを追い出すことが出来なかった」
「……師匠」
「けれど、なによりも私はキミの類まれなる魔法の才能に惹かれたのさ。……それは、本当のことだ」
立ち上がった師匠が、僕のほうに歩み寄ってくる。顔を上げて彼のことを見つめる。
彼の手が僕の肩を軽く叩いた。……まるで、元気づけるみたいだ。
「ジェリー、キミは何処に出しても恥ずかしくない、立派な魔法使いであり、私の弟子だ」
こんなことを師匠に言われたのは、初めてだった。
その所為なんだろうか。僕の目から涙が溢れそうになる。嬉しくて、たまらなくて……。
「というわけで、適度にお土産を頼むよ。あぁ、魔道具が良いな。もしくは、その地域独特の薬」
……一気に涙が引っ込んだ。
師匠には僕の感動を返してほしい。
「キミの未来に、幸せが溢れることを、私は願うよ」
でも、きっと。師匠のその言葉は、嘘でも冗談でもなくて。
――心の底からの言葉だったんだろう。それだけは、よくわかった。
最初のコメントを投稿しよう!