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その後、僕たちは夕食を摂って、予約していた宿屋に戻った――のだけど。
そこで、ちょっとしたトラブルが起きていた。
「キリアン、ジェリー、ちょっと来てくれ」
受付の前に立っていたエカードさんが、戻って来た僕たちを見て手招きをする。
キリアンと僕は一度顔を見合わせて、エカードさんのほうに向かった。
「なにか、あったんですか――?」
僕が尋ねると、受付の女性が深々と頭を下げた。
「申し訳ございません――!」
突然謝罪をされて、僕はぽかんとすることしか出来ない。
僕の様子を見て、エカードさんが髪の毛をガシガシと掻いて訳を教えてくれた。
どうやら宿屋側の手違いで、お部屋が二つしか予約できていなかったらしい。
「しかも、この時期は観光にぴったりだとかで、宿の部屋に空きがないらしい。ほかの宿も似たようなものだな」
確かに、観光客はとっても多かったもんね。
と、一人納得する僕だけど、これはある意味大事件じゃないだろうか?
(これってもしかして、一人は野宿――?)
嫌な想像をしたせいで、顔からサーっと血の気が引くような感覚に襲われた。
けど、僕の態度を見たキリアンが頭を小突く。
「誰かが相部屋になればいいだろ。寝台とかは、運んでくれるんだよな?」
「も、もちろんでございます!」
受付の人がキリアンの問いかけに首を縦に振り続ける。
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