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母は料理が好きな人だった。
部活が終わっておなかペコペコで帰宅し、「おなかすいた」を叫ぶわたしに母は苦笑を返しつつも、軽食を作ってくれていた。
母が作ってくれるものが大好きだった。だから、いつもおなかすいたと言ってはあれこれ作ってもらっていた。
「帰ってきたら、まずはただいまをいうものなのよ」
母は、料理を頬ばるわたしにオレンジジュースでお相伴しながら、わたしをたしなめた。
言われてわたしはいつも、
「ただいま」
と、口をもぐもぐさせながらこたえた。
すると、
「おかえり」
と、母は笑いながら返してくれた。
今のわたしには、もう「ただいま」は言えない。
言いたくない。
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