それを言うのは

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「いいよ、じぶんで持つから」 「いまままでおれを見つけたらすぐになんでも持たせてなのにか?」 「昔の話でしょ」 「優莉はそそっかしいから、袋のなかのタマゴ、こけて割るかも」 「そのときはオムレツでもつくるわよ」  はあ、と海斗はわざとらしくため息をついた。そういうことじゃないんだよな、とつぶやくと、わたしからもう一つの荷物を奪ってすたすたと歩き始めた。 「ほら、来いよ」  振り返って海斗が笑った。 「そもそも、なんでこんな遅い時間にこんなところにいるのよ」  海斗の買い物なんて、近所のコンビニで間に合うはずだ。海斗とわたしは塾も違うし、この時間に出くわすはずがない。 「優莉と話がしたかった」  追いついて海斗のむすっとした横顔を見上げた。
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