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日々が過ぎ、僕も良二も大学を卒業して社会人になった。
そして予想通り、いまの部屋は通勤しやすくて助かっている。
良二とのカラオケのあと、合コンに誘ってくれとか言ってみる。
そうしてふざけ合って商店街を歩いていたら、金物屋の入口から
声がした。
「おかえり!おかえり!」
振り返ると、中年の男性が年老いた女性の肩を支えながら言っていた。
「ただいま、晴日」
女性が言った。
僕は二人を立ち尽くしてみつめる。
「お母さん、今夜の晩ご飯つくるね!」
男性が言った。
なんだか自然と気持ちが流れ込んできて、すべて伝わってきた。
そんな確信があった。
そうか、そうなんだ。
晴日、君は、お母さんの為に晩ご飯をつくる側になったんだね。
そんな親子になったんだね。
僕も大人になって変わっていきたい。
いつか、もっと広い部屋に住んで、愛する誰かと暮らしたり。
そんな日を思ったりもした。
でもいまはまだ、無邪気なままでいいような気がして。
親友と笑いながら歩いた。
━完━
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