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「おかえり!おかえり!」
いつもの声が聞こえてきた。
僕は声を押し殺して泣き続けた。
「おかえり!おかえり!」
何度も何度も、その言葉が繰り返されていく。
言ってて、ずっと言ってて、僕を、独りにしないでくれ......。
「おかえり!おかえり!」
雨で濡れた衣服を脱ぎ、ハンガーにかけて風呂場に干した。
ベッドに倒れて「ただいま」と、言うまで。
その声は続いた。
そして「今夜の晩ご飯は何かな!」
それからは静かな部屋、独りで住む為の部屋。
独りぶんしかモノが無い部屋。
理恵と揃いのマグカップは捨てた。
新しいカップは好きなアニメのキャラグッズだ。
落ち着いて今日のことを反芻してみる。
なんで理恵にショックを受けた?自分がみじめに感じたからだ。
なんで良二の合コンの誘いにキレた?自分がみじめに感じたからだ。
自分、自分、自分ばかりだ、最低だ。
理恵も良二も何も悪いことはしてない。
それなのに僕は、僕は......。
理恵を取り戻せない現実が辛くて、それで良二に八つ当たりした。
また涙があふれてきた。
こんな自分が、悔しくて、情けなくて、もどかしくて。
泣きながら眠りについた。
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