おかえりの部屋

12/19
前へ
/19ページ
次へ
それ以来、大学をサボっている。 良二からのラインには返事をしていない。 良二に、謝らなきゃ。 だけど、できなかった。 大学も、行かなきゃ。 だけど、理恵を見たくなかった。 それでもスーパーには毎日、行った。 うつむいて歩くから、昼間の空も夕焼けにも心が動かない。 そうして帰宅すると......。 「おかえり!おかえり!」 声が聞こえてくる。 その声に癒されるようになっていた。 自分の帰りを待ってくれてるようで。 少し嬉しくて「ただいま」と、言う。 「今夜の晩ご飯は何かな!」 という言葉で、自炊をする気力が出る。 もう、それだけでいいような気がしていた。 人と揉めることに疲れた。 虫なら感情なく同じことを繰り返すだけだ。 僕を裏切らないし、僕を酷い人間にもさせない。 もうなんにもいらない。 この部屋と虫だけが、あればいい。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加