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「わあぁっ!康介、おまえ事故物件に住んでたのかよ!」
良二は動揺して部屋の隅へと逃げたけど、僕は男の子、晴日に
近づいていった。
「子供みたいな声......人、だったのか......」
そうだ。
僕は『虫』と聞かされて『虫』としか認識してなかった。
良二のように端的に『誰なのか』と、考えなかったのだ。
「君だったのか、おかえりを言ってくれてたのは」
しゃがんで目線を合わせてみる。
「僕は、康介っていうんだ。ねえ、誰を待ってるの?」
サラサラの前髪を弾ませて晴日が笑った。
「うちはね、お父さんがいないの。
それでね、お母さん、いつも仕事で忙しくてね、
それでね、夜になると帰ってきて、晩ご飯つくってくれるの。
だからね、晩ご飯は何かな?って、楽しみなの。
だからね、だからね、帰ってくると嬉しくてね、おいしくてね」
「それで、今夜の晩ご飯は何かなって......」
「うん、お母さんの晩ご飯!大好き!幼稚園の給食より好き!」
「そっか」
「康介は?なにが好き?」
「え?」
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