おかえりの部屋

夏が続くのか、みたいな暑さ。
不意打ちな、激しい通り雨。
それの繰り返し。

「おかえり！おかえり！」

「うわあぁっ！」

深夜の0時過ぎに帰宅したら虫が叫んだ。

「ただいまぁ～」

小声で返事をする。

「今夜の晩ご飯は何かな！」

と、いつもの締めの言葉の声も大きい。

「かんべんしてくれよぉ～近所迷惑」

そこに返事は無かった。

この部屋にきて三回目の知らせ。
とにかくわかったことは『ただいま』と、返事すると言わなくなる。
『ただいま』を言うまで繰り返してくる。
言うのは二つの言葉だけで会話はできない。

そして部屋の中でしか声は聞こえないらしい。
隣室の男性が部屋に入るところに廊下で出くわし、声をかけてみた。

「うち、うるさくないですか？」

「いえ静かですよ。こちらこそ夜遅くに帰ることがあるので、
うるさかったらすみません」

と、言われた。

怖さは特に無かったけれど、まだ慣れないでいる。

それ以外は、暮らしは順調だった。
騒音とかゴミ出しのマナーが悪いとか、そういう住人も見かけない。