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本当に殺すつもりなのか。血を分けた妹を。無辜の子供を。
誰かに知られれば非道の誹りを受けることは免れないだろう。雪花姫が邪魔だというのならばどうして相応の者に依頼してくれなかったのか。
かといって王妃の命に背くわけにもいかない。まさか唯一の王位後継者の自分を無下にはしないだろうとは思うものの、嫉妬に狂って実の娘を殺そうとするような女だ。論理的な思考は期待できない。
女という生き物は感情的で困る。知らず溜息をついたのを見とがめられ、「どうしましたの? お気分でも優れないのですか?」と心配そうに顔を覗き込まれた。
どうにもやりにくい。いっそ全て打ち明けてしまおうか。王妃に憎まれていると知ってあの城にいられる者はいないだろう。この森には七人の小人が棲みついているという噂もあるし、雪花ほどの美貌の娘ならばどうとでも生きていく方法があるはずだ。
そうだ。別に本当に殺さずとも、王妃に分からなければ問題はない。
「雪花、落ち着いて聞いてくれるかい――」
雪白王子は雪花姫にこれまでのことを打ち明けた。
泣いて取り乱すかと思ったが雪花は冷静に聞いている。
「僕には雪花を殺すことなんてできないよ。けれどお前が城に戻ってくることをお母様は許しはしないだろう。辛いけれど、お前とはここでお別れだ。できる限り遠くへお逃げ」
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