雪白王子と雪花姫

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 雪白王子は自分と共に生まれた少年のことを思い返す。  か弱い少女だと思っていた者に押し倒されたときの驚きの表情。  こちらが馬乗りになってスカートの下に隠していたナイフを眼前に突きつけたときの、混乱と怯え。  人を殺し殺される覚悟を持った者の目ではなかった。 「……可哀想なお兄様」  呟いてみて、憐憫よりも甘やかな笑みが零れる。  命を奪わぬことを条件に引き受けさせた立場の交換。  生きてさえいれば挽回できると思ったのだろうか。    そんなことはさせる訳がない。  じっくりと時間をかけて身も心も女の籠に閉じ込め、その形に沿うようにしていかなければ。  幽閉された姫には、活力を奪うほどきつく締めたコルセットや重く縛りつける鉄のハイヒールが似合いだろう。  彼を憎んではいないつもりだったが、そんなこともなかったのかもしれない。  自分の忌避した未来へ彼を追い落としてやることを考えると、こんなにも後ろ暗い喜びを感じてしまうのだから。    目当ての場所に辿り着き、鍵を開けて扉を開く。 「ただいま。良い子にしてたかい、雪花姫」
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