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昔々、或る国に王子と姫がいた。
彼等の肌は雪のように白く、髪は黒檀のように黒く、唇は血のように赤く。
兄の雪白王子と妹の雪花姫は一歳しか違わないためかとてもよく似ており、美しかった。
あまりに似ているものだから実は双子なのではないかと思う人々もいたが、この国では双子は凶兆である。表だってそんなことを言える者はいなかった。言えば王妃の逆鱗に触れることは必至なのだから。
人々は王妃を恐れていた。王が王妃の傀儡であることは公然の秘密であり、実権を握っているのは王妃だった。
王妃が日に日に美しくなる雪花姫に嫉妬しているという噂もあった。いつの世もなくならぬ、年を取った女が若い娘の若さ美しさを僻む構図。
とはいえまさか、雪花姫を亡き者にせよという命が自分に下されるとは思ってもみなかった雪白王子は狼狽した。
「実の兄相手ならば雪花も油断することでしょう。秘密の花畑へ連れて行きたいからと護衛をつけさせなければ、たやすく実行できるはずです」
王妃に逆らうことのなかった雪白王子は、今回も逆らうことができなかった。
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