壊れたギター

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壊れたギター

 家に帰り、押し入れの中に入れておいたボロボロのギターを取り出す。  「好きが……立派な理由か」  先生に言われたことが頭の中から離れない。  二週間前……。  先生に安いやつでもいいからギターを買った方がいいと言われ、初めて楽器を売っている店に入った。どれにしたらいいのか分からず迷っていると店員に声をかけられる。  「気になるものはございましたか?」  「あ、えっと。その、まだ練習を始めたばかりで自分のギターがなくて」  「そうですか」  そう言うと、店員は近くに立てかけてあったギターを取り「これなんかオススメですよ」と見せてくれた。初心者に最適だと説明を受け、少し悩みはしたが即決した。初めての高価な買い物をしたことと、背中に乗る初めての重みにどこかフワフワとした気持ちで帰路につく。  「ただいまー」  手を洗うとすぐに自分の荷物が入っている押し入れの中にギターをしまい込む。母に見つかったら処分されてしまう。次の日になったら千弦と一緒にスタジオを借りて練習しようとワクワクした気持ちでメッセージを送るが「明日は予定があるの。ごめん」と返ってくる。しかたないと思い、その日は眠りについた。
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