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解放された日
あの日、心の底から母を軽蔑した。ことごとく幸せを奪っていく、この家に生まれたことを恨んだ。ボロボロのギターを押し入れに戻そうとした時、何かが床に落ちてガシャンッと音を立てる。拾い上げた物は可愛い豚の貯金箱だった。そこには付箋で「葉子お姉ちゃんのギター」と貼られている。
「こんなの置いてたら、またお母さんに……」
バレたら怒られるのは私の方なのに……そう思う心と反対に、胸から込み上げてくる温かい感情。何度拭っても涙が止まらない。すると玄関の扉の開く音が聞こえ、学校から帰ってきた妹たちの「ただいまー」という声がした。座り込んで泣いている私を見ると、妹たちは駆け寄ってきて「大丈夫?」と心配そうに背中をさすってくれる。でも、手に持っていた豚の貯金箱を見ると照れくさそうに笑う。
「もしかして、バレちゃった?本当は葉子お姉ちゃんの来年の誕生日までに貯めてプレゼントしようと思ったんだけど」
「そんなことしなくてもいいのに」
そう言って二人を抱き寄せる。時に憎い日もある、私と違って母から可愛がられる妹たちをズルいと思う日も。それでも私にとっては大切な家族に違いない。
「何を姉妹で仲良しこよししてるの?」
酷く冷たい声に身体が震える。自分の部屋で寝ていたはずの母が目の前に立っていた。
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