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嫌い<大好き
数年後、働ける年齢となった私は通信制の高校に入学。昼はバイト、夜に学校という生活が始まった。友達なんて別にできなくてもいいと思っていたのに、意外にも友達ができた。その子の名前は千弦。私が嫌いになった音楽が大好きな子だった。きっかけは千弦に話しかけられたことから。
全ての授業が終わり、帰ろうとした時だった。
「ねぇ、ここが分からないんだけど……教えてくれる?」
数学の問題集を開いて分からない問題を指さす千弦。「ごめん。私も分からない」と首を振る私。すると、千弦は目を見開いて「え?分からないの?」と驚く。その後、なぜかニコニコと笑顔を浮かべた。
「そっかー、なんか少しだけ嬉しくなっちゃった」
「えっと……なんで?」
「なんでって。山野さんっていつも固い顔してるから勉強できるものだと思ってたし、なんか親近感?湧くなと思ってさ」
固い顔……思い返せば笑わなくなったような気もする。言いたいことも飲み込んで笑うとしたら愛想笑い。自分を押し殺すのは得意だし、その方が平和に物事が進む。
「ねぇ!」と千弦に声をかけられ、我に返る。
「ねぇ、一緒に帰らない?」
千弦は首をかたむけ、私の目をじっと見つめる。私が頷くと、急いで机の教科書を片付けて教室の隅に置いてあったギターケースを背負った。
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