出会い

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 「案内しますね」と言われ、男性の後についていく。初めての場所、初めての空間、目に映るものが全て新鮮だった。案内されて入ったレッスン部屋の中には机と椅子の他に、ピアノとスタンドに立てかけられたギターが二本、スタンドマイクが置かれている。男性は椅子に腰かけ、私も同じように椅子に腰をかける。  「では、改めて北見恵吾です。よろしくお願いします」  「山野葉子です。よろしくお願いします」  文面とは違い、対面での自己紹介は少し恥ずかしい。緊張、それとも別の感情のせいなのか分からないけど、目が合うと思わず逸らしてしまう。  「山野さんは千弦ちゃんと同じ年なんだよね?」  「は、はい」  「そっか……、じゃあ8歳も離れてるのか。若いね」  なんて言葉を返したらいいのか迷っているうちに、先生は机に置かれた資料を手にして「じゃあ、レッスン内容について説明していくね」と話し始める。時間は二時間、歌とギターを一時間ずつのレッスン。最初は基礎的な練習で、歌は発声から、ギターはまず譜読みから始めていく。  「今日は最初だから雑談しながら少しずつ進めて行こうか。知らない人とのレッスンが毎週あるなんて疲れちゃうからね」  そんな先生の気遣いのおかげでレッスンが終わるころには緊張の糸も解けていた。  レッスン後の帰り道、止まらない胸の高揚に笑みがこぼれてしまう。来週が待ち遠しくてたまらなかった。
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