探し物

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 あの様な手を取られては大抵の物は持って来れてしまうと感じた俺は、分解が難しく、尚且つ割と今欲しいと思っている物を思い浮かべることにした。  実は今朝、家を出てスマホを見ながら外を歩いていると、どうやら夕方には雨が降るらしく傘を忘れた俺は丁度そのまま家に戻るよりは、と公園に立ち寄った。  思い浮かべるのはしっかりとしたビニール傘だ。これなら、ユージでも咥えられる折り畳み傘という手は取れないし、犬では分解も難しいだろう。  ほくそ笑みながら公園に向かっていると、「何故俺は野良犬とムキになって張り合っているのだ」と自分自身に呆れ返る気持ちになる。      当然ながら、公園の入り口に立つとユージの姿がある。だが、そのまま視線をベンチにやると、既に物置場からはみ出しているビニール傘の端が見えており、俺の対抗心はみるみると萎えていった。  どうやってこいつは持って来たのだろう?と疑問に感じていたが、その疑問はユージがすぐに解消した。  シンプルイズベスト。と言わんばかりに、傘の中心を強引に噛んで咥えて持って来た。  それが出来るならプラモデルもそのまま持って来れただろうに。と、ユージの手玉に取られている様で悔しかった俺は、その日は物を受け取らずに公園を後にした。
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