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今日は少し難しい物を思い浮かべて見る事にした。プラモデルだ。
元々模型に造詣が深い方ではなく、1から作った経験などないが、プラモデルの様な精巧で口に咥えるには少し大きい物をユージがどの様に持ってくるのかに興味があった。
いつもの公園は家から徒歩10分ほどの場所にあり、かなり広い場所だったが、木が生い茂っていて昼間でも少し薄暗く、子供連れの親が立ち寄って井戸端会議をしていたり、子供が遊んでいる様子は普段からあまりない。
角を曲がって入り口が見えてくると、いつもの雑な毛並みの後ろ姿が見えた。こいつはいつも俺がいる所にいるのだ。
「ワン!ワン!」
俺を見かけると、待ってましたとばかりに駆け寄って来て、ベンチに先導するように歩き出した。そしていつも通り後ろの物置からゴソゴソと物色して、何かを咥えて来た。
ユージが咥えて来た物は長さ20cmほどの指2本ほどの太さの棒の様な物で、ゴツゴツとした形をしていた。
流石のこいつでも、プラモデルは無理だったか。そもそも、俺が思い浮かべる物をいつも持ってくるなど偶然にしたって嘘みたいな話だったのだから、当然と言えば当然か。
そう思っていると、ユージは次々と後ろの物置から棒のようなものを持ってくる。そもそも、これは何なのだろうか?とぼけっと様子を見ていると、4本ほどその棒を置いたところで、最後に足と腕がなく、ユージは胴体に頭のついたプラモデルを持って来た。なるほど、そういう事か。と合点がいった。
そのプラモデルは胴体と合わせるとかなりの大きさになる事が見て取れる物で、合体した物をそのまま咥えてくるのは至難だろうと感じた。
果たして、こいつはここまで持ってくるのにこれをわざわざ解体してからこの様にここに集めて来たのだろうか?それとも、元々バラバラのものをそのまま持って来たのだろうか。
しかしここまでくると、ただの収集癖では片付けられない様な気がして来て、ユージはもしや何かを探しているのではないか、という発想も浮かんで来る。
まあ、犬がそんなに躍起になって探す物なんて無いだろう。とすぐに浮かんだ思考の泡を弾いて消した。
どちらにせよ、この程度の物はこいつにとって容易だった様だ。
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