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「娘は聖女様なのだ! 偉大なる力を安売りしたりするものか! いざその時が来るまで力は温存させてもらう!」
両親がそう触れ回るものだから誰もそうやすやすと頼む事は出来なくなった。名前や存在感ばかりが過度に美化され、周りも彼女に崇拝し、媚びへつらう状況だ。この扱いにセリーナはとても気分が良くなったし、更に高飛車な性格へと変わっていった。彼女の日々は贅沢な宴と華やかな舞踏会で彩られ、誰もが彼女に魅了される。しかし、その一方で彼女の傲慢さは王国に少しずつ暗い影を落としていった。
不満を露わにし始めたのは、助けを求めたにもかかわらず断られ、結果家族を亡くした者たちだった。聖女であるなら身分に関係なく救うのが当然ではないかというのが彼らの主張だったのだ。
そうした中、ついに運命の時が訪れた。なんと王国の第一王子が病に倒れてしまったのだ。国中が王子の回復を一心に願い、セリーナは国王から「王子を救ってくれ」と直々に頭を下げられた。今回ばかりは無視が出来なくなったセリーナはいよいよ料理を作る事に……。まさに、“いざその時”がついにやってきたのだ。
「まあ、王子様ならわたくしの料理を食べるに相応しいでしょう。作って差し上げても構いませんが、命を救った暁にはぜひ王子妃の座を頂きたいですわ」
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