星屑ひとつ

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星屑ひとつ

 沢山散らばった星屑を、ひとつひとつ拾い集めれば、キラキラがあっという間に手一杯になる。  暗闇の中、私を照らす星屑を小さな小瓶に沢山詰め込み蓋をすれば、輝きを放つ小瓶の完成。  小瓶はそっとポケットにしまい、残った沢山の星屑は川に流す。  光を放つ川は先が見えなくて、どこまで続いているのかわからない。  星屑を集めては川に流しを何度も繰り返すが、キラキラと光るそれがなくなることはなく、川はキラキラと輝き続ける。  疲れても休む暇なんてなくて、私のポケットで輝く光に視線を向けては再び星屑集め。  ふと顔を上げれば、周りは沢山のキラキラが溢れている。  川と星屑以外何もないこの場所も、今日だけは特別。 「準備完了しました」  年に一度のお客さんに声をかければ、キラキラと光る川の上を渡る。  反対側からもやって来る人物。  二人は川の真ん中で抱きしめ合い、楽しそうに会話をする。  私のお役目は、二人が無事に川を渡り出会う事。  そして、無事に帰れるように川に星屑を流し続ける事。  この輝きが消えてしまえば、二人が会うことは叶わなくなってしまうから、私は星屑を集める手を止めない。  それからどれくらい経ったのか、そろそろ二人が元の場所へと戻る時間。  川の真ん中で惜しむ様に抱きしめ合い離れると、二人は元来た場所へと帰り着く。  幸せの中に切なさを含んだその表情は、毎年変わらない。 「お帰りなさいませ」  声をかければ、ニコリと微笑み帰って行く。  今年も無事に終えることができ、私はポケットから小瓶を取り出し蓋を開ける。  最後の仕上げに小瓶の中の星屑を川に流せば、キラキラと光り輝いていた川から輝きは消えた。  再びやってきた暗い時。  先程まで星屑が沢山あった場所に寝転がり瞼を閉じる。  来年のこの日まで、私は深い眠りへと着く。  瞼の裏に先程の微笑みが浮かぶ。  静かで暗くて誰もいない。  それが当たり前の私にとって、あの微笑みに隠された思いを理解することはできない。  幸せや切なさ、色々な感情を持つあの人が少し羨ましくなる。  星屑をいくら集めても、小瓶に閉じ込めても、私には理解できないもの。  何十、何百、何千年。  繰り返してきたこの日はいつだって変わることはない。  次第に意識は沈んでいく。  おちて、落ちて、堕ちて。  いつか私も星屑になる。 《完》
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