宝箱の中身

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「あ……」 それを見た瞬間に高校時代を思い出す。 そうだ、これ、ラブレターだ。 何が良かったのか、そのころ私は1つ下の後輩から猛アプローチを受けていた。 少しシャイだった彼は、口にできないことを文字に込めて何通も何通も手紙をくれた。 私よりかわいい子なんて学校にたくさんいた。それこそ、彼のクラスメイトには学年一可愛いと言われるくらいの女子がいたと聞く。 恋愛ごとに疎く、好きという気持ちがよく分からなかった当時の私は、彼からの告白をすべて断っていた。 それでも彼は私だけを見続けて、私の好きなところを散々伝えてくれた。 周囲からは「あんなに告白してるんだから付き合ってあげればいいのに」とか「告白されることに優越感でも抱いてるんじゃないの」とか言われたりもした。 誰かに好いてもらえることは嬉しかったけど、告白されることに優越感を抱いたことはない。むしろそろそろ諦めてくれたらいいのにとさえ思っていた。 たくさん告白してくるから、なんて理由で付き合うのも失礼な気がした。
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