宝箱の中身

5/6
前へ
/6ページ
次へ
翌日、私は彼の教室に行って彼を呼び出した。 その日私は、人生で初めての告白をした。 『私、あなたが好きみたい。私と付き合ってくれませんか? もちろん交際の意味で』 彼から帰ってきた言葉は今でも覚えている。 『お、おれの方が何倍もあなたが好きです! もちろんです!』 紅潮した頬がとても可愛らしくて、私はクスクスと笑った。 告白がこんなにも緊張するものだとは知らなかった。 彼は毎回こんな風にドキドキしながら私に手紙をくれていたのだと思うと、愛おしさがこみ上げてきた。 『おれから告白してたはずなのに、なぜかおれが告白されたみたいになったのはちょっと悔しいですけど、ぷ、プロポーズはおれからしますから!』 そんなことを言われた時は気が早すぎるなと思った。 けれど彼はその約束をずっと覚えていた。 『おれと結婚してください』 そう言われた時、先を越されたなぁと思った。 『はい』 感極まって泣く私に、彼は指輪をくれたのを今でも覚えている。 その指輪は結婚指輪と一緒に今も左手の薬指に嵌めている。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加