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ストーカー
茜音ちゃんの後ろ姿を追いかける。
彼女は仲のいい2人の友達に挟まれ、なにやら楽しそうに笑っている。
あぁ、可愛い。
僕はスマホを構え、シャッターボタンをタップした。
またコレクションが増えた。
スマホで撮った写真をプリントアウトして、部屋の壁に飾るのが待ち遠しい。
もちろんそれだけは壁が足りず、アルバムに入っているものもあるけれど。
あ、そうだ。新しいアルバムを買わないといけないんだった。
「じゃーねー! また明日学校で!」
「うん、また明日」
「バイバーイ」
交差点で茜音ちゃんだけ別れて青信号を渡っていく。
茜音ちゃんの友人たちは角を曲がり、宿題だるい、と話しながら遠ざかって行った。
僕はそちらには目もくれず、茜音ちゃんのあとを追いかけて点滅し始めた信号を渡った。
あぁ、歩く姿も美しい。うちの女子制服の可愛さは茜音ちゃんのためにあるのではないかと思う。茜音ちゃんにとてもよく似合っている。何枚写真を撮っても足りないくらいの魅力がある。
短すぎず長すぎないスカートから伸びるすらりとした脚。ハイソックスの下にあるローファーがリズムよく足音を刻んでいる。
スッと伸びた背筋はスカートと1:1の割合の白シャツに隠されている。寒くなって柔らかいカーディガンに包まれるのもいいけど、僕は今の時期が一番好きだ。
歩くたびに揺れるポニーテールはサラサラで、だけどくせっ毛だから毛先が波打っている。おろしていてもきれいなウェーブを本人はあまり好んでいないらしいけれど、僕にはそれすら魅力でしかない。
僕は電柱の陰からスマホを構えた。
――カシャッ。
うっかりシャッター音を出してしまった。
それに気が付いた茜音ちゃんの足が一瞬だけ止まる。僕は電柱の陰に隠れて息をひそめる。
コツコツと靴音が遠ざかっていく。
ほっと息を吐き出した僕は、電柱からこっそり頭を出し様子を窺った。
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