ストーカー

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彼女の姿はないが焦らない。 茜音ちゃんなら次の角を曲がった先を歩いているはずだから。 電柱から離れ、僕は茜音ちゃんが曲がったであろう角を右に曲がった。 「うわぁっ!」 思わず声を上げた僕は、すぐさま自分の口を両手でふさいだ。 曲がった先で、茜音ちゃんが仁王立ちしていた。 僕を見るなりにんまりと笑みを浮かべた。 笑っているようで笑っていない。 「今のは気づいたからね。はい、今の写真削除! ほらほら、早く消して!」 「で、でも今のは結構きれいに撮れたんだよ! ほら見て!」 僕はアルバムアプリを立ち上げ、茜音ちゃんに見せつける。 「あらほんと、我ながらいい後ろ姿。でもダメ。私が気づいた盗撮は画像を消す! 約束でしょ?」 「あ! う、うぅ……」 茜音ちゃんにスマホを取り上げられたかと思うと、スイスイと画面に指を滑らせた茜音ちゃんに画像を削除されてしまった。 返ってきたスマホのアルバムには、最後の一枚が消えていた。ゴミ箱を確認してもしっかり削除されている。 「……きれいだったのに」 「あのねぇ。約束を守れないなら今後盗撮はすべて許さないわよ。もちろん、あんたの家にある写真も全部燃やす」 「ごめんなさいごめんなさいそれだけはご勘弁を!」 「だったらバレないようにやることね」 「……ハイ」 肩を落として返事をした僕に、茜音ちゃんは満足そうに頷いた。
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