ストーカー

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「ほら。さっさと帰るわよ」 「え……」 「ストーカーに気づいたんだから、今更盗撮ももうムリでしょ。それとも私の隣を歩くのは嫌かしら?」 「そんなことありません! でも恐れ多いと言うか……」 「めんどくさ……」 じっとりした目で言い捨てた茜音ちゃんは、僕に背を向けてさっさと歩いて行ってしまった。 僕はその数歩後ろを歩く。 「ねぇ。あんた私なんか撮って楽しい?」 茜音ちゃんは僕の数歩先を歩いたまま言った。 僕が彼女に真正面から、後を付けてこっそり写真を撮っていいかと許可を取りに行った時にも、彼女は同じことを言った。 犯罪の許可を本人にとりにくるってどんな神経してんの、と毒を吐きながら彼女は、私が気づいた写真は消す、という条件付きで盗撮を許可してくれた。 彼女からしてもゲーム感覚なのだろう。 彼女はこんなにも可愛らしいのに、自分の容姿に興味がないと言うか関心がないというか……自信がないのだと言う。 僕に盗撮されようと何とも思っていないみたいな態度を取る。 「楽しいよ。すごく。茜音ちゃん可愛いし、ずっと眺めてられるし、制服姿も様になってるし私服も可愛いし何なら僕が選んだ服を着て写真を撮らせてほしいあぁけど自然体がいいからやっぱり普段の茜音ちゃんをこっそり撮影した――」 「キモッ」 早口でまくし立てた僕の言葉を遮る。 無遠慮に毒を吐く茜音ちゃんも好き。
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