落果

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 さっき、ちらっと言ったかな。彼女の家には一匹、大きなセントバーナードがいてね。茶色と白が良い感じの、とても役に立つ番犬だった。不審者が入ってきたらすぐ飛んでって、ガブリとやって追い払ったこともあるそうだぜ。偉い話だよなあ。  まあ、その子もさすがに怖くなってな。そりゃあ、そういう経緯のある犬だったんで。  お縁の下を、ちらりと覗いてみたんだと。  まあ、そしたらな。  ――彼女が捨てた早生ミカンの皮が、綺麗に放射状に剥かれて、縁の下に置かれていたんだな。
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