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――そんなに怖かった? 驚かすつもりじゃなかったんだけど。ホラーの語り手に向いてる? 冗談じゃない。俺が語れるのは多分、この一篇だけになるだろうさ。すぐに、廃業と相成るだろう。
話が良く脱線するね。君と話していると、どうも。……君、物書きを志しているんだったね? 俺、調べて来たんだ。話が思いもしない方向に転がるのは、作家にとっては良いことらしいじゃないか。今のこの状況も、そんな風に喜ばしいことだったりするのかい?
……失礼。ひとの本気の夢について、軽々しく言及すべきじゃなかったね。俯かないでくれ。俺が泣かせたみたいになる。
ごめんね。
話を続けても良い?
……オーケイ。続けよう。
――彼女はそれでも、果物をそこに置くのを、やめたりはしなかった。彼女なりに、何だか、理由があったらしくてね。
……嬉しかったそうなんだ。
自分が残したものではあるけれどね、――自分のおかげ、というか、何というか。
「私によって生命を繋いでいるものがいる」ということが何か、まあ、嬉しかったんだと。……この件を聞いたとき、俺もけっこう、温かい気持ちになったね。
――まあ、その子の生き方が若干危ういな、とも、同時に思ったけれど。
だってそうじゃないか?
そういう所に付け込む悪い奴らなんて、この世の中、いくらでもいるんだぜ?
こうして今、ほら、俺と君だって、SNSを通じて会っているけれどね。対面で。
……いや、俺が危ない奴だとか、そういうのが言いたいんじゃないさ。ふふ。そもそもそういうヒトは、自ら正体を開示したりなんて、しないだろう?
君もきっと、ヘンなヒトじゃないだろうしね。いや、ちょっと話して分かったよ。良い人間だってね。周囲に気を配って生きると、良いと思うよ。
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