落果

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 ……オジさんみたいに、お節介なことを言いすぎたね。嫌われちゃったカナ? なんて。  ――その女の子はね。結局、どうなったのかって?  まあ、気になるよね。うん。  大体、予想は付くと思うけれど、――驚かないでね。また、さっきみたいに。  その子は死んでしまった。  ――いや、少し違うかな。「いなくなってしまった」の方が、より適切だろう。  ……やっぱり驚くよねえ。  鳩が、豆鉄砲を食ったような顔をしているよ、今の君。  ――笑わないでくれって?  いや、いや。  この現代に生きている人間に向かって、こんな純粋な例えをつかうことが、まだあるんだなあ、と、しみじみね。  面白いひとだ、君は。  ――話を戻そうか。  その子は死んで――否。いなくなってしまった。  この世からね。  ……するどいね。君は。そんな、鳥の巣みたいな頭をしている癖に。 「この世からいなくなる」と、「死ぬ」は、同じ意味じゃあないか、って?  否、と、俺が言ったからね。打ち消したから。それで、「ん?」と思ったのかな。  まあ、そうだね。違うよ。違うんだ。  月並みな表現をこれから、何の忌憚もなく俺は遣うけれど、どうか怒らないでね。  ――生きているんだよ。  彼女はね。  俺の中で、いつまでも。  温かい心の彼女は、俺の中に、灯のように、未だ息づいている。  そう、きっと、――これからも、ね。
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