第3話 美味しいパンとは

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 デリバリーや、コンビニのだなんて焼きたてじゃないし……うちの店でも、軽食を出す用のサンドイッチも冷たいのばっか。わざわざパン屋行くのも億劫だったから。  それぐらいしか、覚えてないから……熱々のパンって、いつ以来かしら? 家でも面倒でトーストとか作っていないし。 「ぷくぷく、ふわ〜。あんまいパンになるといいなあ?」  楽しそうねぇ?  そんなひとり言を言えるくらい……美味しいパンってどんなのかしら?  ふんわり?  ぷくぷく?  ……甘い?  どんなの!?  釜じゃなきゃ、一緒に食べたいモノじゃないのぉ!? 「ふふ……ふふ。この釜さん、今日は不思議。いい火を焚いてくれるわ」  火があるらしいとこに、型を置いて。  あっちぃけど……だんだんといい匂いがしてきたわ。嗅覚もあるようね? ちょっと焦げ臭いのは薪をくべているからかしら?  でも……いい匂いね?  甘くて、優しくて。  小麦とか、バターのいい香り。  トーストとも違う……いい香りだわ。  いつ以来かしら?  食べ物でいい匂いを感じたのって。 「あ、膨らんできた!」  そうこうしていると、生地が膨らんできたみたい?  たしかに……どんどんいい匂いしてくるわ!!  こんなにも……めちゃくちゃいい匂い、久しぶり!!  釜だから食べられないじゃないのぉお!!?
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