第二章:占い館殺人事件

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 ティーカップに紅茶を注いでから真理恵は少し大きめの瓶を手にした。透明な瓶の中は色鮮やかで、なんだろうかと琉唯が見遣れば、「これ、砂糖なの」と教えてくれた。  星やひし形、兎や猫の形をした色のついた砂糖が瓶一杯に入っている。その可愛らしさに千鶴が「かわいいですね!」と少しテンションを上げた。 「そうでしょう。妹も好きだったの、可愛いって」 「まだ、紗江のこと気にしてるの? いい加減に気持ちの整理つけなさいよ」 「そうだけれど……。思い出に浸るぐらいはいいでしょう?」  小百合にそう返して真理恵は「小百合さんは砂糖二個だったわね」とハートの形をした砂糖をティーカップに入れた。それから自分が飲むだろうティーカップにひし形などの砂糖を入れてから、他に砂糖が必要な人はいるかと聞く。 「あ、ほしいです!」 「一つ、お願いします」  千鶴と伊奈帆が手を上げたのを見て、真理恵は少し考えてからそうだわとにこりと微笑んだ。 「時宮さん、好きな形の砂糖を選んでいいわよ」 「え、いいんですか!」 「伊奈帆さんも時宮さんの後に選んで」 「ありがとうございます、小百合さん」  はいどうぞと真理恵が瓶を渡すと千鶴はどれにしようと目をキラキラさせている。こういう可愛いの女子って好きだよなと思いながら、琉唯は真理奈からティーカップを受け取った。 「琉唯は砂糖を入れないのか」 「紅茶はストレート派なんだよ、おれ」  だから、砂糖もミルクもいらないと琉唯はティーカップに口をつける。鼻を抜ける紅茶の香りとフルーティーな味が口の中に広がった。これは美味しいと琉唯は頷く。 「あ、そうだ。お茶菓子を私、もってきたの」 「それ早く言いなさいよ、ほんっと動きが鈍いわね」 「ごめんなさい……。えっと、今川さんが好きなクッキーを持ってきたの」  ほらと包装されたクッキーを見せる。それは最近、人気のあるショップのチョコチップクッキーだった。手作りが売りの店なので包装も手製のように見える。「じゃあ、お皿に出しましょう」と、真理恵がそれを受け取って台の引き出しから皿を取り出した。 「僕も手伝うよ」 「渡辺くん、ありがとう。このティーカップは小百合さんに」  私はクッキーをと話す二人から砂糖を選んでいた千鶴に目を向ける。彼女は「可愛い、どれにしよう」と悩んでいた。琉唯も少し気になったので「どんなのがあるの」とシュガーポットを覗く。 「うさぎとか星とか、猫、ひし形とかの図形もあるよ」 「あ、うさぎ可愛い」 「可愛いよね!」  少し大きめではあるけれどうさぎの砂糖は可愛らしかった。これは女子受けしそうだなと琉唯でも思うほどに。暫し、悩んでから千鶴はうさぎの形を選び、シュガーポットを伊奈帆に渡した。  伊奈帆もさまざまな形の砂糖に目移りしていたが、猫の形を選んで見て楽しんでから紅茶にいれる。  そうやって話していると、テーブルにクッキーの乗った皿が乗せられた。待ってましたといったふうに小百合が我先にと手に取って食べ始める。「これ、美味しいのよね」とにこにこしながら紅茶を飲む。その様子に遠慮はないのかと琉唯が少し呆れた時だった。
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