第二章:占い館殺人事件

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「犯人は分かってる」 「……は?」  田所刑事は隼の返答に呆けた声を上げた。それはそうなってしまうよなと、琉唯はその反応も無理はないと頷く。自分も「なんで分かるんだよ」と突っ込みたかった。  隼は「琉唯の気づきで犯人は割り出せた」と。犯人に関して自信はあるようだが、自分の推理が正しいのかは警察の捜査で分かったこととすり合わせなければならないと説明する。 「けれど、一般人が警察の捜査情報を聞くことは難しいだろう。だから、俺は此処で自分の考えを発表するしかない」 「ちょっと待ちなさい。また推理を披露するとでもいうのかね?」 「俺は披露するわけではない。自分の考えを伝えることで警察の捜査に協力するだけだ」  俺はただ、ここで一人、自分の考えを語るだけだ。それを参考にするかは警察に任せるとなんでもないように隼は言う。別に一人で語るだけならば邪魔にはならないだろうといったふうに。  なんでそんなに平然としていられるのだろうか。琉唯は不思議に思うけれど、それが自分のためであるのは理解しているので、文句をいうこともできない。彼は安心させたいだけなのだから。 「まず、前提条件として今川小百合と親しい人間であり、彼女の好みを理解している存在が二人以上は必要な事だ」 「待ちなさい。おじさんはまだ聞くとは……」 「この条件に今回は当てはまっている。小林先輩も渡辺先輩も真理恵さんも今川小百合と親しく、彼女の好みを理解していた。そうだろう?」  田所刑事の制止など無視して隼は真理恵たちに問う。えっと三人は声をかけられて顔を見合わせながらも頷いた。さっきも言ったけれど、彼女は自分のことも他人の事もべらべらと喋るタイプで、何でもやってもらうスタイルだったからと。  この三人は前提条件に合う人物であり、今川小百合が警戒もせずに関われる人間に当てはまる。その証拠に彼女は特に気にするでもなく、三人と接していた。全く警戒されないという状況を作らねば殺害はできない。 「おそらくだが、紅茶に毒が混入していたはずだ。ティーカップなどに痕跡が出ているのではないだろうか?」 「……確かに、そうだな」  田所刑事は隣にやってきた若い刑事から捜査情報を聞いたようで、隼の推理を認める。ティーカップや零れた紅茶から毒物反応が見られたのだという。  隼は「ならば、毒を仕込める人物は限られるはずだ」と真理恵と輝幸へと目を向けた。
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