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「君たちが来たときにはこうなっていたといことだね?」
警察が到着し、現場は封鎖される。野次馬の騒がしい声がする中、廊下で刑事に発見当時の状況を説明した琉唯たちは皆、頷いた。
「鍵はかかっていたと」
「オレが鍵を開けたんで」
「鍵は佐藤先輩が持っていたものと、スペアの二個しかないです」
「なるほど」
亡くなった結が持っていた鍵はこの部屋のもので間違いないことを里奈と聡が証言する。密室かと田所と名乗った渋面の刑事は腕を組んだ。腹部を刺されてナイフも落ちているのだから、殺人の線で警察は考えているのだろう。
遺体に触れたかという質問に隼が「生死を確認するために脈を計りました」と答える。それ以外では触ってはいないし、現場を荒らしてはいないと。それを聞いてから田所刑事はうーんと頭を掻いた。
「田所刑事」
「なんだ」
若い刑事がやってきて耳打ちをする。うんっと片眉を上げて田所刑事は琉唯を見遣った。
「君の名前って緑川琉唯くんだったよね?」
「そう……ですけど……」
「君が昼に佐藤結とカフェスペースの近くで口論していたという目撃情報があるのだが、本当だろうか?」
琉唯はその質問に確かに自分は彼女とカフェスペースの近くで話をしていたことを認める。傍から見れば口論に見えなくもないので、そう答えたのだが田所刑事は「確認なのだが」と再度、質問してきた。
「口論していたんだね?」
「口論ってほどではないですよ。佐藤先輩がちょっと強引だったので、強く言い返しただけで……」
「なるほど。少し君に聞きたいことがあるのだが……」
個別にと言われて琉唯ははぁっと声を上げた。まさか、これだけで疑われるのかと。佐藤結と出逢ったのはあの時が初めてであったことを琉唯は伝えて、自分はこの事件とは関係ないと主張した。
それでも、田所刑事は「これも確認のためだから」と言って聞いてはくれない。
「ちょっとこっちに」
「警察というのは単純なことも分からないのか」
「……なんだね、君は」
琉唯を連れて行こうとする田所刑事に隼がはぁと露骨に溜息を吐いて見せた。彼の態度に田所刑事は眉を寄せながら「何が言いたいんだね」と顔を向ける。
琉唯はそんな二人に挟まれる形になってしまい、彼らを交互に見遣るしかない。千鶴たちも何がと疑問符を浮かべていた。
「琉唯は犯人ではないし、そもそも彼は講義を受けていた。調べればすぐに分かることだ」
「それでも話は一応のために聞かなきゃならないんだよ」
「犯人ならもう分かっている」
「……は?」
隼の発言に田所刑事だけでなく、その場にいた全員が呆けた声を出していた。彼は何を言っているのだろうかと言うように。そんな反応を気にも留めずに隼は開かれたドアから中を指さした。
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