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「佐藤結の上げられた腕の指先に文字が書かれていただろう」
「あぁ、あの歪なやつ」
「あれは犯人を告げるものだ」
佐藤結は犯人が部屋を出て行ってからなんとか伝えようとしたのだろう。ただ、力は残されていなかった。死ぬ間際にできることといったら限られている。犯人に痕跡を消されてしまう可能性もあるのだ。
けれど、彼女は書き残した。隼は「琉唯も見ただろう」と問う。確かに床に血で描かれていたのを目にしているので頷いた。
「歪ではあるが数字の5が書かれている」
「そう見えるかもしれないが、もがいた時についた可能性も……」
「5の数字の隣に線が引かれていただろう。あれも含めて一つの文字だ」
「は?」
どういう意味だと田所刑事は首を傾げた。それは千鶴たちも同じで顔を見合わせているのだが、琉唯は何が言いたいのだろうかと考えてみる。
5という数字の隣に縦に線が引かれていた。これを一つの文字と捉えると考えて、あっと琉唯は気づいた。
「5って漢数字の五か!」
「そういことになる。漢数字の五の文字と、その隣に一本の線がある漢字を名前に持つ人物は一人しかいないのではないだろうか?」
あっと一人、また一人と気付いて視線を向ける。その先に立つ〝彼〟は何を言っているんだと笑った。
「サークルメンバーらの反応を見るに、君の名前の漢字は悟るという字で間違いないだろう。その字には漢数字の五が含まれているな?」
「……なんだよ。オレが犯人だって言いたいのかよ! 言いがかりも大概にしろよ」
「現状でいうならば、君が一番、殺害可能だ」
「何を証拠に……」
「君が最初に現場にいたというのがまず挙げられる」
隼は発見に至るまでの経緯を順序良く話し始めた。まず、最初に現場にいたのは悟で、その次に琉唯たち三人が到着した。少ししてから里奈と聡の二人がやってきている。そこで話をしてから悟が里奈から鍵を受け取って開けた。
此処まではいいだろうかと問われて、皆が頷く。それに悟が「鍵はかかっていたじゃないか」と同意を求めた。それに里奈がそうだよねと頷くが、隼は「そうだろうか?」と問い返した。
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