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第二章:占い館殺人事件
一.
「ねぇねぇ、緑川くん」
「何、時宮ちゃん」
「占いって興味ある?」
大学のカフェスペースで隼に腰を抱かれながら座っていた琉唯は、目の前でサンドイッチを食べている千鶴へと目を向けた。彼女は「先輩に集団占いに誘われてさぁ」と話す。
「私の知り合いの先輩にさ、占い師をやってる友人を持っている人がいるんだよね。占いって私、興味あるからさ。ちょっと聞いてみたら、集団占いやるから来る? って誘われたの」
千鶴の話に琉唯が「集団占いって?」と問えば、「複数人を合同で占うの」と教えてくれた。
占い師によっては人気で対面占いができないこともあるらしい。占いたい人たちが集まって一緒にやってもらうということができるのだという。できるかは占い師の対応次第ではあるのだが、千鶴の先輩の友人はしているようだ。
「ひろくん誘ったらサークルの助っ人頼まれたとかで断られちゃって。私一人はちょっとなぁって」
「他の女子誘えばいいじゃん」
「誘ったけど、あの先輩苦手って言われて……」
そろりと千鶴は目を逸らす。なんと分かりやすいことだろうかと琉唯は出かけた言葉を飲み込んだ。
先輩は集団占いへの誘いを「興味あるなら参加しよう!」と強引に進めてしまったらしい。少しばかり話を聞かないというか、自分の思うままに行動してしまうタイプの人間なのだと。
千鶴は「迷惑になるだろうからって断ったんだけどね」と遠い目を向けていた。話を聞かない先輩となると苦手意識を持っている後輩は少なからずいるはずだ。千鶴の女子友達はそうだったようで断られてしまったのだという。
「緑川くん、お願い!」
「琉唯を頼るのはどうかと俺は思うが?」
「鳴神くん、そこをなんとか!」
「待って、おれに頼むところだろ」
隼に許可を取る必要はないだろうと突っ込むも、「いや、前方彼氏面には許可必要かなって」と返されてしまう。一瞬、納得しかけてしまい、琉唯は負けた気分になった。
占いには興味はないのだが、彼女には世話になっている部分がある。隼の行動に理解があり、愚痴を聞いてくれるし、前回のサークル勧誘の時も付き添ってくれた。
付き添いぐらいならば別にやってもいいなというのが琉唯の考えだ。なので、「別にいいけど」とその頼みを受ける。
「緑川くん、ありがとう!」
「……琉唯」
「いや、サークル勧誘の時に時宮ちゃんには付き添ってもらったしさ。お返しってわけじゃないけどしてもいいかなって」
断れなくて仕方なく請け負ったわけではないのだと琉唯が話せば、隼は不満そうではあったものの納得はしたようだ。琉唯がそういうならばといったふうな態度に千鶴が「流石、前方彼氏面」と呟くのが聞こえる。
「俺も着いていこう」
「言うと思った」
「ですよねー」
琉唯たちの反応に隼が「行かないという選択はないが?」と不思議そうにしている。当然だろういったふうに見てくるものだから、二人は顔を見合わせて苦く笑うしかなかった。
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