第二章:占い館殺人事件

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「うっ」  小百合が呻きもがきながら口を押えたかとおもうと、げぽっと吐き出す。口元から血が零れ、目を見開きながらもがき崩れて――床に転がった。  何が起こったのか、判断できずに固まる。苦しみながらティーカップを床に落とし、椅子から転げ落ちるように床に倒れた彼女から目が離せない。 「い、今川さんっ!」 「小百合さん!」  倒れる小百合に駆け寄った伊奈帆と真理恵が身体に触れようとして隼が制する。迂闊に動かしてはいけないと隼に冷静に指摘されて、二人は手を引っ込めた。隼は倒れる小百合をなるべく動かさないように生死を確認する。  見開かれた眼は虚空を見上げ、口から垂れる血が床を汚す。呼吸をしている様子もなく動かず、死んだのではないかと誰もが思った。脈拍を計った隼が首を左右に振ったことでそれは確信に変わる。 「警察に連絡を、急いで」 「あ、わ、わかった」 「私は館長に伝えに行くわ」  隼の指示に伊奈帆がスマートフォンを取り出し、真理恵はこの占いの館の管理人である館長へと伝えにいくべく部屋を出て行った。残された人たちはただ、小百合を眺める、死んだということが信じられないように。  千鶴は声がないようで小百合から目が離せず、輝幸は呆然としていた。隼は小百合の傍から離れて周囲を見渡している。それを見て琉唯も周りに目を向けてみた。  テーブルには三つのティーカップとクッキーの乗せられた皿に、様々な形の砂糖が入ったシュガーポット、ミルクピッチャーが置かれている。小百合が口をつけたティーカップは彼女がもがき崩れた時に床に転がり、紅茶は零れて絨毯に染みをつくっていた。  傍にある台には真理恵が飲むはずだった紅茶の入ったティーカップと、ティーポット、二つめのミルクピッチャーがある。クッキーの包装は綺麗に畳まれてあった。 (なんで、ミルクピッチャーが二つあるんだろ)  人数が多いと聞いて二つ用意したのだろうか。琉唯は疑問に思いつつ、小百合へと視線を移す。小百合は恐らく毒殺されたのではないだろうか、吐き出された血が生々しく映る。  死体というのを見るのは二度目であるが、そう簡単には慣れるものではなかった。ただ、外傷で死亡した遺体でないのがまだ救いか、恐怖心はそれほど煽られていない。  小百合の周辺には彼女が落としたティーカップが落ちているぐらいで特におかしなものはなかった。
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