第二章:占い館殺人事件

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三. 「また、君たちか」  屋敷に到着した警察が現場へやってきて捜査されている中、琉唯は目の前でなんとも言えない表情をしている田所刑事に苦く笑い返す。部屋にやってきた彼は琉唯たちを見て渋面をさらに渋くしていた。  隼は特に顔色を変えるわけでもなく、ただ捜査している警察官たちを眺めていた。彼が大人しくしているのを見てか田所刑事は「何もしていないだろうね」と琉唯に聞いてくる。隼に聞かないのは彼の言動が言動だからだろう。  とはえい、やってないかと問われると微妙だった。何せ、周囲の状況を確認し、質問などをしていたのだから。それが何かしたに当たるかは微妙だったので、琉唯は「……多分」と答える。  もうそれだけで何かしらの事をしているのだなと田所刑事は察した。「探偵ごっこはやめなさいとあれほど言っただろう」と呆れている。 「探偵ごっこなどしてはいない。琉唯を安心させたいだけだ」 「だからね、君……」 「この中に犯人がいるとなって、暫く拘束されるのは目に見えている」  これが毒殺と決まれば犯人はこの中にいる可能性は高く、拘束されてしまうのは誰でも想像できることだ。犯人だと決めつけられて、そうでなくともこの中に殺人犯がいるという不安で精神的な疲労は免れない。  琉唯はすでに感じているようなので、それを取り除いてやりたいと思うのは当然だと、さらりと隼は答えて田所刑事は溜息を零した。  それは君がもうすでに探偵まがいなことをやったという言質になるのだがと、田所刑事は突っ込みたかったようだが、それは息と共に零れいてしまう。琉唯は「その、すみません」と謝るしかなかった。 「緑川くんが謝ることではない。これは彼の重すぎる感情のせいだろう……。はぁ……それで、君は何か分かったというのかね」  田所刑事は隼が勝手に行動する前に話を聞こうと問う。また犯人を刺激するようなことをされないためだ。その判断は正しいと琉唯でも思う、隼は思ったままを口にしてしまうから。  隼は組んでいた腕を下して田所刑事に「いくつか確かめなければいけないことがあるが」と前置きをして答えた。
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