第二章:占い館殺人事件

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「渡辺先輩と真理恵さんは彼女のティーカップに触れている。小林先輩は彼女に触れてすらいないので仕込むのは難しいだろう」 「それは僕たち二人のどちらかが犯人だって言いたいのかい!」 「端的に言えば、そうだ」  隼はオブラートに包むことなく、はっきりと言った。少しは包んでほしいものだったけれど、彼は他人に使うほどの優しさはないのだろう。犯人扱いされた二人は露骨に表情を変える。これには田所刑事も痛む頭を押さえてしまう。 「紅茶に仕込むなんて、無理よ。みんなも飲んでいるじゃない」 「紅茶に仕込む必要はない。別のモノに仕込めばいいし、隙を見て混入させることもできる」  例えば砂糖やミルクを入れる時など誰にも怪しまれず、見てもいない状況ならば気づかずに行えるかもしれない。そう隼が言えば、真理恵は「砂糖は入れた人がいるじゃない」と反論した。  砂糖は小百合だけではなく、真理恵や千鶴たちも使っている。千鶴と伊奈帆も自分で選んでいるのだからと言われて隼はすっと目を細めた。 「あ、じゃあミルクを入れる時は? あの時、誰も見てなかったし」  千鶴の言葉に伊奈帆は確かに見てなかったなと気付く。真理恵もそういえばと思い出したように輝幸を見た。その視線に輝幸は「僕じゃない!」と声を上げる。なんで、殺さなければいけないんだと言うように。 「殺す理由なら三人にあるだろう」 「え?」 「三人に共通しているのは、自殺した西田紗江と友人または姉妹であることだ」  西田紗江と聞いて三人は黙った。その反応に隼は「仮説だが、今川小百合が関係しているのだろう?」と話しを続ける。例えば、西田紗江は自殺の原因は今川小百合にあるのではないかと。  もしそうならば、西田紗江に片想いをしていたと言われている輝幸や、彼女の姉である真理恵には殺す動機というのが存在する。  仮にそうだったとしても、今川小百合を殺していい理由にはならないと、隼は「復讐する人間の動機など知らないが」と興味なさげに付け足した。
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