第二章:占い館殺人事件

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「俺たち以外の三人は今川小百合に何かしら思うことがあった、あるいは殺意、または不満を抱いていたのではないだろうか?」  今川小百合の態度というのは自己中心的であったのだから、親しくしていた三人には思うところもあったはずだ。隼の指摘に三人は返事を返さなかった。それが答えであるというのは誰が見ても分かることだというのに。  隼は「それが今回の事件を起こすための鍵でもある」と、彼等に目を向けた。伊奈帆はおどおどと落ち着きなく、輝幸は怯えて、真理恵は不安げに隼の事を見つめる。 「じゃあ、犯人は渡辺先輩?」 「ち、違う! 僕じゃない!」 「でも、入れるタイミングはあったし……」  千鶴は輝幸に疑いの目を向ける。一人、また一人と彼を見ていく。輝幸は「僕じゃない!」と声を上げた。琉唯はみんなの視線に疑問を抱く、本当にそうなのだろうかと。  隼は言った、「琉唯の気づきで犯人は割り出せた」と。自分が指摘したのは二つあるミルクピッチャーと、ハートの形をした砂糖のことだけだ。うんっと首を傾げて琉唯は「本当に渡辺先輩が犯人か?」と口に出した。  それに千鶴や伊奈帆が「え?」と不思議そうに目を瞬かせる。違うのかと言ったふうの周囲に隼は「何か勘違いしているようだが」と口を開く。 「俺は一言も渡辺先輩、君が犯人だとは言っていないが?」 「え?」 「いや、犯人は紅茶に毒を入れるタイミングがある人って……」 「確かに渡辺先輩もその中に含まれているが、もう一人、いるだろう」  千鶴の疑問に隼は答えながら一人に視線を向ける――獲物を捕らえたように。  琉唯はその視線の先にいる人物を見て、あっと気付いた。そうだ、彼女なら可能なのかと。
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