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カギとハコ
拳が痛え。
カギは、ボクシンググローブのように腫れ上がった自分の両手を見る。
もう何人殴ったかも覚えていない。
顔は、腫れ上がってるのか、頬は綿詰めされたように内側の肉が腫れ、口の中に溜まった血を吐き捨てると欠けたか折れたかした歯が幾つか飛び出す。左目も瘤でも出来たのか視界が塞がっている。
黒かったはずのシャツは千切れ、赤く染まって返り血なのか自分の血なのかも分からない。腹を守る為に水で濡らして雑誌を巻きつけた晒には何本もの刃物が突き刺さっている。気が付かなかったがズボンにもドスが一本刺さっている。なの痛みを感じないのはそれだけアドレナリンが頭から溢れてるからか?
カギは、役目を果たすことの出来なくなったシャツを脱ぎ捨てると背中に赤字で大きく✖️された逆さの孔雀の刺青が姿を現す。
「罪人が……」
足元から呻くような声が聞こえた。
カギの足元には作務衣のような厚手の白い道着を着た血塗れの男が腹這いに倒れていた。
男だけではない。
カギの立つ真っ直ぐ伸びた赤い絨毯の敷かれた廊下には同じような道着を着た男女が何十人も倒れていた。
血塗れで。
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