指輪

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 カギは、ハコの右手に握った箸を指差す。 「握り箸はダメだって言ったろう」  ハコは、桜でんぶと白いご飯で口を汚した顔を向ける。 「だってこの方が食べやすいんだもん」  そう言って唇を尖らせて抗議する。 「ダメだ」  カギは、顔をむすっと怒らせながらもティッシュでハコの口周りを拭う。 「もうお姉ちゃんなんだぞ。ちゃんと食べなさい」 「ゔー」  ハコは、小さく唸りながらもカギに言われた通りに持ち方を直す。 「野菜も食べるんだぞ」 「ゔーっ」  ハコは、唸りながら桜でんぶご飯を食べる。  カギは、苦笑しながらも愛しげに娘を見て、半熟の目玉を潰してご飯に乗っける。 「……大分髪が伸びたな」  そう言ってハコの髪を触る。  耳を隠すくらいのボブショートだったのに気がついたらセミロング近くまで伸びている。 「今日は仕事が早く終わったらゆかりのトコに髪切りにいくか」  カギの言葉にハコは目を輝かせて箸を置く。 「カンナちゃんに会える⁉︎」 「早く売り切ることが出来たらな」  カギは、苦笑して言う。 「ほら、早く食べろ。遅くなったら今日は行けなくなるぞ」 「はあい!」
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