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成長ってするんだなあとしみじみ感じながらカギも小籠包の準備をする。
そうしているうちに開店時間の十一時を迎える。
カギは、小籠包の刺繍のされたエプロンと頭に三角巾、ハコは、猫が小籠包を齧ってる刺繍をされたピンクのエプロンを……と、いっても紐が結べないのでカギが丁寧に着せ、水玉模様のピンクの三角巾を巻く。
「ハコ……左手」
「はあい」
ハコは、言われるままに左手を出す。
カギは、首にぶら下げた小さな袋を開き、小さな指輪を取り出す。
ハコの大きな瞳のように輝いた大粒のダイヤモンドが中央に鎮座し、その周りを螺旋のように小さなダイヤモンドが散りばめられた指輪。
カギは、ハコの左手をそっと握り、指輪を彼女の薬指へと差し込んでいく。
ハコは、嬉しそうに表情を輝かせて自分の指に指輪が入っていくのを見る。
この行為をする度に一つの記憶が蘇る。
「カギ……私コレ欲しい」
中学三年生のハコはどこからか手に入れてきた結婚雑誌のページの切り抜きをリンゴジュースのストローを咥えたカギに見せる。
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