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ギン
カギは、指輪を嵌めて喜び飛び跳ねるハコを嬉しそうに、そして悲しげに見る。
「ねえパパ」
ハコが指輪を見ながらカギに尋ねる。
「んっ?」
「なんでお外に出る時しか指輪付けちゃダメなの?」
ハコは、不思議そうにカギを見る。
当然と言えば当然と言える質問にカギは何と答えるか悩む。
一応、戸籍上ではカギとハコは夫婦となっている。
ハコの祖母が生前にカギをハコの身元引受人、後見人にするに際して法律上で最も揉めない方法だからだ、と意思表示出来ないハコの代理人として手続きをしてくれた。
まさか、こんな形でハコと戸籍上とは言え夫婦になるなんて思っていなかったのでカギは複雑に感じた。
だから、ハコに結婚指輪を送るのも嵌めるのもまったく可笑しくはない。しかし、そんな理由を今のハコに話しても意味はないし、強いて違う理由を話すなら……。
「虫除けとお守りかな……」
カギの言葉にハコは当然意味が分からず首を傾げた。
そんなこんなと話している内にお客さんはやってくる。
最初にやってくるのは商店街に買い物に出てきた主婦達。
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