カギとハコ

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 修験者は、ポッと小さく息をはいてそのまま気を失った。  カギは、革靴に付いた血を払い、通路の奥に目を向ける。  廊下に倒れている信者共は仕切りにカギを奥に行くのを阻止しようとしていた。  つまりカギの目指す先はそこにあると言うことだ。 「現実でもラスボスは奥の部屋か」  カギは、腫れ上がった頬と唇で皮肉っぽく笑うと晒に刺さった刃物を抜き、足に刺さった刃物が抜けないよう千切れたシャツの残骸で縛ってから奥へと進む。  血塗れで倒れた信者達が呻き声を上げてカギに手を伸ばそうとする。しかし、カギが鋭い目を向けて睨むと怖気付いて手を引っ込める。  それを見る度にカギは嘲笑いそうになる。  結局、こいつらの信仰心なんてこんなものなのだ。  弱い心を埋める為に強く、言葉の巧みな連中に従い、(すが)りつき、それを上回る圧倒的な暴力を振るう者が現れれば一切の信仰も忠誠も捨てて見て見ぬふりをする。  どこもかしこも皆同じだ。  何が欲望のままに生きるだ。  カギは、砕けた歯を噛み締める。  こんな奴らにあいつは……。  ハコは……。  扉が現れる。
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