カギとハコ

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 整理された情報がカギの脳に、心に伝わる。  豚足に見えたのは醜く太った中年の男。スライムのような垂れ下がった贅肉に尻まで伸びた汚らしくベタついた黒い髪、顔を埋め尽くす髭、開いているかどうかも分からない目。  テレビで何度も取り上げられたカーマ教の教祖だとすぐに分かった。  分かったが……どうでもいい。  カギの目が映したのは……脳が彼に見せまいとしていたのは教祖が(またが)り、醜い腰を押し付けているものだ。  散らばるようにベッドから垂れ下がった黒髪、青く腫れがり、血で汚れた顔、虚な目、伸びきったゴムのように力の抜けた裸体……。  俺の脳みそは馬鹿だ……とカギは、思った。  どんなに視覚情報を歪めようと、脳内麻薬(ドーパミン)を大量分泌して幻覚に酔わそうと俺が彼女を認識出来ない訳がない。 「ハコ……」  カギは、ずっと探し続け、求め続けていた最愛の女性の名を呟く。  しかし、女性は反応しない。  虚な目でどこか分からない空を見ているだけだ。  教祖が腰を振るのをやめ、ハコを投げ捨てるように離れてカギを睨みつける。 「何者だ貴様は⁉︎」
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