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「もちろん、私もカミル様とのご縁に感謝していますわ。不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
深く頭を下げたルフィナに、カミルは優しい笑みを見せてくれた。
しばらく他愛のない話をしていると、会話が途切れたところでカミルが突然こちらに身を乗り出した。
「できれば、一刻も早くあなたと暮らしたいと思う。早急にアルデイルにお越しいただきたい。そうだ、俺が帰国する時に一緒に……というのはどうだろう」
「え、でも……、婚約に関する手続きや式の準備など、色々としなければならないことがあると思うのですが」
何故か急にそんなことを言い出したカミルに、ルフィナは戸惑う。そう遠くない日にアルデイルに嫁ぐことは理解していたが、カミルの帰国は二日後だ。さすがに急すぎはしないだろうか。眉を顰めたルフィナに、カミルは頑なな表情で首を振る。
「そんなものは、あとでどうとでもなる。あなたの兄上――ヴァルラム殿下に頼んでみましょう」
何としてでもルフィナを国に連れ帰るのだという強い意志を感じる。だが、彼の本心が分からなくてルフィナは混乱するばかりだ。まだほとんど会話もしていないのに、そんなに気に入ってもらえたのだろうか。
そうこうしているうちに、カミルは本当にヴァルラムに話をつけてしまった。目障りなルフィナをさっさと追い出せるのだから、兄としても悪い話ではなかったのだろう。アルデイル側から強く望まれたのだから仕方ないのだと言いつつも、ヴァルラムはせいせいしたと言いたげな表情を浮かべていた。
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